同志社大学の新川達郎名誉教授の論説より
2022年11月01日
鈴木洋一 at 11:55 | 活動
11月に入りました。これから、長野市のみならず国及び地方自治体では、来年度(令和5年度)に向けた予算編成の作業に入っていきます。私が所属する会派においても、今月中旬、市長に対し令和5年度予算・施策に対する要望書を手交する予定で、現在、そのための議論を行っているところです。
予算編成はもとより、議会及び議員は様々な視座から行政側と議論を行いますが、さすがに、各職員は行政のプロであり、そのプロと議論するには私たちもそれ相応に理解を深め、知識を積み上げ、議論を深めていかなければなりません、そうした中、地方自治体の財政運営と議会の役割等について、同志社大学の新川達郎名誉教授の論説に接しました。大変参考になりましたので、ご紹介します。
<財政運営と財政民主主義>
現代社会においては地方自治体も一つの経済主体である。地方自治体の活動は収入と支出によって行われており、収支のバランスをとった運営が求められている。これを一般的には財政運営と呼んでいる。
収入については徴税という強制力のある財源があり、支出については住民の福祉の向上を目的とし、公平公正にお金を使うことになっている。つまり、財政民主主義ということ。
地方自治体の財政民主主義の基本にあるのは、予算制度であり、予算というと予算編成に専ら関心が向きそうであるが、予算制度は、予算編成、予算執行そして決算という一連の財政運営を指すものである。
住民の代表機関である議会は、毎会計年度の事業開始の前にあらかじめ予算を議決しなければならず、当該年度に入ると執行機関はその予算を適正に執行し、その翌年度には執行後の予算について決算を調製し、議会の議決を得る。
自治体議会の地方財政に関し、次年度予算編成に関する審議に関心が集まりやすく、重視されることは当然だが、毎年度の予算編成(計画)は、前年予算の決算(監視評価、修正行動)によって修正あるいは立案されるのであって、議会は決算(評価)を踏まえて、予算(政策形成)審議を行うのである。
<議会として持つべき能力>
議会は、財政運営における政策方針の全体像のみならず、個々の政策・施策・事業の財務についても理解し、事前と事後に政策評価をすることができる能力を持つ必要がある。
議会とその議員は、政策財務の基礎知識、予算と決算の基礎知識を持った上で、決算議案や予算議案のみならず、そこに含まれる政策・施策・事業のそれぞれの政策財務について審議し決定する能力を持たなければならないのである。
<政策の観点から財務を審議する議会>
①政策課題が的確にとらえられているかが問題であり、住民ニーズやその意向の把握が必要となる。予算制度における住民の視点の反映は議会の審議の要点である。
②政策案の妥当性や合理性の審議が必要。政策提案は執行機関からも議会からも可能であり、時には住民提案も考えられる。その際に、提案がその目的を達成することができるものであって、実現可能性があり、必要な財源資金を調達できるかどうかを議会として評価し判断する必要がある。
③政策・施策・事業の実施状況を適切に監視すること。実施過程が適時的確に進捗しているかどうか、とりわけ予算執行状況は、その成果に直結することから、監査委員のみならず議会による監視体制が整えられなければならない。
④政策評価の観点からの審議機能。とりわけ決算過程においては、会計上の適正だけではなく、政策の成果の観点からの評価が求められ、それが次の政策形成に向けての出発点の役割を果たす。
従来軽視されてきた決算や監視の機能を重視し、それを踏まえた政策提言をし、議会と議員が、そうした視点を持って政策財務に取り組む必要がある。
<政策的な財政運営への転換>
地方自治体の財政運営は、これまで一般的に言われてきた「入るを量りて出ずるを制する」という考え方に対して、「出ずるを量りて入るを制する」という視点も重視されるようになってきた。
これまでの発想は、保守的な財源金庫番主義的運営であり、財源中心の財政運営の傾向が強かった。他方、現在、必要とされる支出額を考えて財源を確保するという政策的な財政運営への転換が求められるようになっている。
それは収支の均衡や健全財政の原則を否定するのではなく、「選択と集中」という標語に示されるように、政策意図を明確にした財政運営が求められる。
しかしながら、今日の低成長と財源制約が厳しくなった時代においてこそ、政策的な観点からの地方自治の展開が求められ、それに対応した財政運営が必要。
政策財務はそのためのカギになる観点であり、地方自治を担う自治体議会の中枢的な役割の一つである。そうした観点から政策・施策・事業を監視・評価し、その成果を踏まえて政策提案や審議を行い、議決をしていくことにある。
<自治体議員が備えなければならない能力>
このような議会の権能を果たしていくためには、政策財務に関する知識や運用能力を、自治体議員が備えていかなければならない。政策、計画、事業とその財務を一体的に理解すること、執行監視や成果評価を行い、費用便益を明らかにし、金銭収支の適正を確保し、財源資金の調達と支出の合理性を追求することは、これからの自治体議員にとって必須ということになる。
政策・施策・事業のいずれのレベルにおいても、
①政策問題ないし政策課題の探索ないしは発見が前提となる。
②その政策問題について政策課題として俎上(そじょう)に載せることができるかどうかの判断、いわば政策的に対応できる問題かどうかを判断しなければならない。
③政策的対応ができるとして、その目的達成のための最も合理的な遂行手段(政策手段)を提案できなければならない。
④良い政策提案も、その実現可能性、それに必要な財源資金をはじめとして資源調達が可能か、実施の環境条件が整っているのかを判断しなければならない。
⑤政策の選択や決定を合理的に行わなければならない。
⑥その政策の実施を監視する必要がある。
⑦最後に、その政策の評価を行うこと。
地方自治体が経済主体として政策に、いかにかかわるかというマクロな観点から、個別の政策経費における合理的な資金収支の構成まで、求められている政策財務の知識や技術の範囲は広い。
自治体議員としての政策財務の知識、技法、その運用の習熟には、様々な「議員力」の向上の方策が必要となる。財務会計の基礎知識のみならず、政策財務を議員が作動させる個々の能力の向上、組織や仕組みの理解などの力を養わなければならない。
以上、ご紹介するとともに、私自身、常に留意しながら取り組みを進めたいと思います。
予算編成はもとより、議会及び議員は様々な視座から行政側と議論を行いますが、さすがに、各職員は行政のプロであり、そのプロと議論するには私たちもそれ相応に理解を深め、知識を積み上げ、議論を深めていかなければなりません、そうした中、地方自治体の財政運営と議会の役割等について、同志社大学の新川達郎名誉教授の論説に接しました。大変参考になりましたので、ご紹介します。
<財政運営と財政民主主義>
現代社会においては地方自治体も一つの経済主体である。地方自治体の活動は収入と支出によって行われており、収支のバランスをとった運営が求められている。これを一般的には財政運営と呼んでいる。
収入については徴税という強制力のある財源があり、支出については住民の福祉の向上を目的とし、公平公正にお金を使うことになっている。つまり、財政民主主義ということ。
地方自治体の財政民主主義の基本にあるのは、予算制度であり、予算というと予算編成に専ら関心が向きそうであるが、予算制度は、予算編成、予算執行そして決算という一連の財政運営を指すものである。
住民の代表機関である議会は、毎会計年度の事業開始の前にあらかじめ予算を議決しなければならず、当該年度に入ると執行機関はその予算を適正に執行し、その翌年度には執行後の予算について決算を調製し、議会の議決を得る。
自治体議会の地方財政に関し、次年度予算編成に関する審議に関心が集まりやすく、重視されることは当然だが、毎年度の予算編成(計画)は、前年予算の決算(監視評価、修正行動)によって修正あるいは立案されるのであって、議会は決算(評価)を踏まえて、予算(政策形成)審議を行うのである。
<議会として持つべき能力>
議会は、財政運営における政策方針の全体像のみならず、個々の政策・施策・事業の財務についても理解し、事前と事後に政策評価をすることができる能力を持つ必要がある。
議会とその議員は、政策財務の基礎知識、予算と決算の基礎知識を持った上で、決算議案や予算議案のみならず、そこに含まれる政策・施策・事業のそれぞれの政策財務について審議し決定する能力を持たなければならないのである。
<政策の観点から財務を審議する議会>
①政策課題が的確にとらえられているかが問題であり、住民ニーズやその意向の把握が必要となる。予算制度における住民の視点の反映は議会の審議の要点である。
②政策案の妥当性や合理性の審議が必要。政策提案は執行機関からも議会からも可能であり、時には住民提案も考えられる。その際に、提案がその目的を達成することができるものであって、実現可能性があり、必要な財源資金を調達できるかどうかを議会として評価し判断する必要がある。
③政策・施策・事業の実施状況を適切に監視すること。実施過程が適時的確に進捗しているかどうか、とりわけ予算執行状況は、その成果に直結することから、監査委員のみならず議会による監視体制が整えられなければならない。
④政策評価の観点からの審議機能。とりわけ決算過程においては、会計上の適正だけではなく、政策の成果の観点からの評価が求められ、それが次の政策形成に向けての出発点の役割を果たす。
従来軽視されてきた決算や監視の機能を重視し、それを踏まえた政策提言をし、議会と議員が、そうした視点を持って政策財務に取り組む必要がある。
<政策的な財政運営への転換>
地方自治体の財政運営は、これまで一般的に言われてきた「入るを量りて出ずるを制する」という考え方に対して、「出ずるを量りて入るを制する」という視点も重視されるようになってきた。
これまでの発想は、保守的な財源金庫番主義的運営であり、財源中心の財政運営の傾向が強かった。他方、現在、必要とされる支出額を考えて財源を確保するという政策的な財政運営への転換が求められるようになっている。
それは収支の均衡や健全財政の原則を否定するのではなく、「選択と集中」という標語に示されるように、政策意図を明確にした財政運営が求められる。
しかしながら、今日の低成長と財源制約が厳しくなった時代においてこそ、政策的な観点からの地方自治の展開が求められ、それに対応した財政運営が必要。
政策財務はそのためのカギになる観点であり、地方自治を担う自治体議会の中枢的な役割の一つである。そうした観点から政策・施策・事業を監視・評価し、その成果を踏まえて政策提案や審議を行い、議決をしていくことにある。
<自治体議員が備えなければならない能力>
このような議会の権能を果たしていくためには、政策財務に関する知識や運用能力を、自治体議員が備えていかなければならない。政策、計画、事業とその財務を一体的に理解すること、執行監視や成果評価を行い、費用便益を明らかにし、金銭収支の適正を確保し、財源資金の調達と支出の合理性を追求することは、これからの自治体議員にとって必須ということになる。
政策・施策・事業のいずれのレベルにおいても、
①政策問題ないし政策課題の探索ないしは発見が前提となる。
②その政策問題について政策課題として俎上(そじょう)に載せることができるかどうかの判断、いわば政策的に対応できる問題かどうかを判断しなければならない。
③政策的対応ができるとして、その目的達成のための最も合理的な遂行手段(政策手段)を提案できなければならない。
④良い政策提案も、その実現可能性、それに必要な財源資金をはじめとして資源調達が可能か、実施の環境条件が整っているのかを判断しなければならない。
⑤政策の選択や決定を合理的に行わなければならない。
⑥その政策の実施を監視する必要がある。
⑦最後に、その政策の評価を行うこと。
地方自治体が経済主体として政策に、いかにかかわるかというマクロな観点から、個別の政策経費における合理的な資金収支の構成まで、求められている政策財務の知識や技術の範囲は広い。
自治体議員としての政策財務の知識、技法、その運用の習熟には、様々な「議員力」の向上の方策が必要となる。財務会計の基礎知識のみならず、政策財務を議員が作動させる個々の能力の向上、組織や仕組みの理解などの力を養わなければならない。
以上、ご紹介するとともに、私自身、常に留意しながら取り組みを進めたいと思います。