長野市も大いに採用すべき、浜松市及び藤枝市の取り組み

鈴木洋一

2022年10月11日 09:39

 先週の10/5、6の2日間、長野市農業委員会での県外視察が行われ、私も参加してまいりましたので、内容に関し、ご報告いたします。今回の視察において、特に、浜松市及び藤枝市の取り組みは、長野市農業政策においても参考とすべきものであり、積極的な取り組みが必要だと受け止めました。

●三ケ日町農業協同組合(JAみっかび柑橘選果場)
<概要>
 令和3年10月、総事業費79億1、529万円の新たな柑橘選果場が完成した。静岡県と浜松市からそれぞれ5億円の助成を含め、補助金総額は48億5,178万5千円。
井口組合長によると、全国の柑橘生産量は、昭和50年代の350万t時代から令和3年度の72万tへと大きく減少している。従前のルールや販売方法等を見直す時期であり、供給体制を整備し、ブランドを活かし市場からあてにされる産地形成の更なる強化を図るための取り組みである。

<所感>
 全国的な生産量は減少しているが、三ケ日みかんについては、増加しており安定している。しかし、後継者確保の課題は解消できていない、特に、小さな農地の需要が少ないこと、境界の調整がしにくいこと等、現在の農地法において、対応が困難な事例に直面していることから、カテゴリー毎に解決方法を模索しながら取り組んでいるとのことだ。
長野市農業のみならず全国的な課題である後継者確保と育成、更に、農地法による制約等を踏まえ持続可能な農業を考えていく必要がある。
 現在、JA三ケ日は農地銀行による農地の集積・集約に取り組んでいる。資料では、令和10年に営農規模縮小、更に、営農をやめる、との意向を示した数値は35.2%である。また、組合員経営主の年齢構成を令和2年と平成27年を比較すると59歳以下の割合が41.5%から27%へと大きく減少している。こうしたことを受け、職員2名体制で、これまでの受け身の姿勢から組合員からの要請に寄り添った対応へと、将来に向けた積極的な取り組みが行われている。本市のJAにおいても、更なる能動的な対応へと進化させていくために、参考にされたい。

●浜松市農業委員会(農地銀行について)
<概要>
 浜松市農業は、恵まれた自然条件、豊富な水を活用し農業基盤整備がなされ、更に、有利な立地条件から、みかんを中心とした果樹、お茶、畜産等の多彩な農産物により発展してきた。令和2年実績で全国第7位の農業産出額を誇っている。しかし、担い手の減少により、総農家数、経営耕作面積は減少傾向にある。
 以上を踏まえ、浜松市農地銀行を開設し、農業委員会に申込みのあった「貸したい・売りたい農地」の情報を公開し、担い手確保及び耕作地面積減少に向けた取り組みを行っている。

<所感>
 17,500人への調査を行い、情報を専用のホームページで公開している。毎年4月に更新し、以降、適宜、更新している。アクセス数は22、242件(令和3年度)で、毎年5,000筆(360ha)の新規登録があるが、成約数は149筆(13.5ha)。中には使い難い農地があるが、耕作に繋げられる農地については、農地再生補助金を市単独予算を執行している、との説明があった。しかし、耕作に結び付けられない農地が増加していく現状への効果的な解消方法が見つからず、大きな課題であるとの認識を示されていた。
 長野市農業においても、担い手確保及び耕作地面積減少、言い換えると、後継者確保、耕作放棄地解消は大きな課題である。しかし、農地の現状や情報を広く公開しているかという視点でみると、決して充分とは言えないと考える。長野市は農業が持つ多面的な効果を市民全体で共有し、更に、農業を長野市における重要な産業の一つとして位置付けているのであれば、農業に関する情報を広く市民に伝える努力を更に強化すべきではないか、と考える。特に、農地情報について、浜松市の取り組みに倣って取り入れるべきである。

●藤枝市農業委員会(ふじえだゼロから農業エントリー制度について)
<概要>
 藤枝市農業委員会は、令和3年5月1日より、「ふじえだゼロから農業エントリー制度」を開始した。自給自足や生きがいを目的として耕作や就農を目指す方の、市内遊休農地について10a以下でも使用貸借を可能とするもので、遊休農地発生防止と解消、更に、新規就農促進を図っている。(注:農地法第3条に基づき、藤枝市の使用貸借下限面積は30aとしている)藤枝市が窓口となり、農地の貸し借りを支援するとともに、農地がなくても気軽に農業をはじめるスキームを作ったといえる。

<所感>
 長野市の農業政策に積極的に取り入れるべき事業だと考える。要件も実情が考慮されており、一例として、農作業経験のない方の場合は、0.6a(60㎡)以下、農作業経験はないが、営農している方の指導を受けながら農業をはじめられる場合は1a(100㎡)以下等の権利取得が可能となっている。農業に関心を持ち、生きがいや趣味の一環とした意欲的な就農者の増加により、新規就農の促進と荒廃農地解消に向けた効果的な取り組みとなり得ると受け止めている。
 これまでの実績は、本年9月末で54件の申請があり、うち、エントリー認定者は52名で29件が農業委員会で許可されたとの説明があった。更に、申請者の年代別でみると、50代以下が37名、約69%を占めていることから、#楽しく、#趣味として、#手始めに、#小規模から、#初心者大歓迎、#農業女子・男子、#家族で、等の本制度が目指している方向に確実に進んでいるのでは、と感じた。
農地の売買、賃貸借は農地法に基づくが、法律の範囲内で出来る策を講じることで、現在直面している課題解決に向け、大いに参考とすべき取り組みだ。

●KADODE OIGAWA
<概要>
 静岡県島田市に所在する県下最大規模の体験型フードパークで、地元農産物が集められ、施設内にはマルシェ、産直レストラン、カフェ等があり、令和2年11月に、JAおおいがわが設立した。

<所感>
 平日の昼ということもあり、多くの女性が産直レストランで地元産食材を中心に舌鼓を打たれていた。詳細は不明だが、JAの他、行政や各種団体の協力により設立された経緯があると思うが、農業を中心とした地域振興に大きく貢献している施設だと思われる。長野市内には同様の施設がなく、その設置に期待を寄せたい。

 以上となります。冒頭でも記しましたが、長野市の農業政策において、欠けていると思われる取り組みが両市において進められ、効果が期待されています。本気で新規就農等の就農人口増や耕作放棄地増加の解消を考えていくのであれば、行政として更に関与を強め、取り入れていく必要があります。今後、議会において提案していきたいと思います。

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