世帯所得の増と生活の安定に繋がる政策を

鈴木洋一

2022年08月04日 10:39

 連日、新型コロナウイルス第7波の猛威が報道されています。私と家族も感染しましたが、感染力の強さ、感染のリスクの高まりについて、身をもって感じたところです。また、ここに来て、幾つかの行事等について中止、延期の連絡が入っていますが、行動制限等の強い宣言はないものの、自粛を余儀なくされることも少なくなく、社会経済活動への影響が懸念されます。

 経済社会活動への懸念では、ウクライナ危機を受けた資源や穀物の価格の高止まり、円下落による輸入品の急騰等、私たちの生活に影響が及ぶ事態に直面しています。

 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長のレポートで現下の経済状況、とりわけ、7-9月期の実質GDPについて次のようにまとめています。

 「2022年4-6月期の実質GDPは、前期比0.8%(前期比年率3.2%)と2四半期ぶりのプラス成長と推計。
まん延防止等重点措置の終了を受け、外食、宿泊などの対面型サービスを中心に民間消費が前期比1.4%の高い伸びとなり、プラスの成長主因となった。更に、高水準の企業収益を背景に設備投資が前期比1.2%の増加となったことも成長率を押し上げた。
 2022年4-6月期の実質GDPは、コロナ前(2019年10-12月期)の水準を回復したとみられるが、消費税率引き上げの影響で、新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化する前に経済活動の水準が大きく落ち込んでいた。直近のピークである2019年4-6月期と比較すると、2022年4-6月期の実質GDPは▲2.6%低くなることが見込まれ、経済活動の正常化までにはかなりの距離があるといえる。

 7月に入り、新型コロナウイルスの新規陽性者数は急増しているが、政府は今のところ特別な行動制限を課していない。物価高による家計の実質購買力の低下が下押し要因となるものの、行動制限がなければ消費性向の引き上げによって個人消費の回復基調は維持されるだろう。米国をはじめとして海外経済が減速しているため、輸出が景気の牽引役となることは当面期待できないが、民間消費を中心とした国内需要の増加を主因として7-9月期もプラス成長となることが予想される」

 以上のように、第7波や物価高騰といった景気後退圧力を感じながらも、個人消費の回復基調は維持され、民間消費を中心とした国内需要の増加により7-9月期もプラス成長が期待される、としています。

 他方、民間消費等の国内需要が増加することは歓迎すべきことですが、家計の逼迫について目を向けて考えなければならないと思います。
過日、2022年度の最低賃金について、全国平均31円引き上げ、時給961円(引き上げ率3・3%)とする、との報道がありました。
 2022年度の消費者物価指数は前年度比2・6%上昇する見通しで8年ぶりの高水準、といわれています。物価高騰による影響は低所得者層ほど深刻だと言われていますので、賃金上昇は生活を安定させるために重要なことです。今回の最賃引き上げがどこまで現状を踏まえたものなのか、生活の安全に直結するものなのか、昨年を上回る引き上げ率とのことではありますが、物足りなさを感じます。

 以前のブログでもご紹介しましたが、経済財政諮問会議による1994年と2019年の世帯所得を年代別で比較した調査結果では、世帯所得の中央値が、35歳から44歳の世代では104万円減少し、45歳から54歳の世代では184万円減少、全世帯の所得分布は、65歳以上の高齢者世帯(20%→36%)、単身世帯の増加(26%→38%)に伴い低所得階級の割合が上昇した、とまとめています。未だ、多くの国民の生活は楽ではなく、物価高騰への対応に四苦八苦しているのではないでしょうか。

 世帯所得の増と生活の安定に繋がる政策が重要で、現在、直面している少子化対策や除族可能な社会づくりにも繋がっていくのでは、と思います。こうした視座に立った議論を進めていかなければなりません。

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