幸せを実感できる労働環境を祈って

鈴木洋一

2018年03月13日 02:00

 3月定例会に、『労働者の声を踏まえた真の「働き方改革」の実現を求める請願』が経済文教委員会にて採択か否かについて審議されました。結果的に継続審査となった訳ですが、この請願が出された当初は「裁量労働制」が除外される前でしたガ、その際に、私なりの考えをまとめたので、ラフな原稿ですが、掲載します。

 そもそも法律とは、ある程度は私たちの生活を縛る面がある一方で、誰もが自分なりの人生や幸せを追いかける権利がある。また、基本的人権を社会で守り合うために最低限のルールを定めたものではないか。

 私たちを守る法律の中身について、現在、働き方改革関連法案の審議で、大きな柱の一つである「長時間労働の是正」について、働き方改革関連法案に関わった労働政策審議会に、117件もの不自然なデータを含む調査資料が出され、なかったはずの調査の「原票」も、厚労省の地下倉庫に眠っていた等、裁量労働制を巡り厚生労働省が不適切なデータの作成等、大きな問題となっている。それでも政府は、今国会での法案成立にこだわり続けている。

 今回の法案は、残業時間の上限規制などに労働時間規制の緩和を抱き合わせて一本化したもの。早くから経済界や野党の支持団体である連合などを巻き込み、議論が展開されてきたが、不適切なデータ等も問題について、経団連の榊原定征会長は22日、記者会見で「あってはならないミスだが、法改正の趣旨とは別問題」と述べ、改めて法案の早期成立を求めている。一方で、連合の神津里季生(りきお)会長は16日の会見で「裁量労働制の運用実態は極めて問題ありと主張してきた。徹底的に世の中に見える形で究明を求めたい」と訴えている。

 政府は、残業時間の上限規制の実施時期について、大企業は2019年4月としているのに対し、中小企業は1年遅らせて2020年4月にする方針を定めている。中小企業に1年間の猶予を与えたとしても、その間、大企業のコスト削減のしわ寄せをもろにかぶる中小企業の労働者は残業をしても仕方ない、というすべての労働者の健康と安全を確保という原則を揺るがすことにつながるのでは、と危惧する。

 日本企業のうち、大企業の占める割合は0.3%、中小企業は99.7%。従業員数ベースでは約70%が中小企業に属している。つまり、会社で働く多くの市民にしわ寄せが及ぶ可能性があるということ。中小企業の社員には働き方改革どころではないことにもなりかねない。

 働き方改革が打ち出されてから、約1年。大企業は改革を進めているという。しかし、働く人たちは本当に働きがいを感じているのでしょうか。そして、中小企業は、大企業からのコスト削減圧力の中、人手不足もあり、生産性の向上と長時間労働の是正をどのように実現したらいいのか、苦慮しているところが多いのではないでしょうか。

 裁量労働制は年収要件がないことで若い人たちがターゲットになる可能性が否定できない。大変な仕事のなかで成果だけ求められ、その成果をこなすために長時間労働を余儀なくされる。今、政府側は、『自由な時間で好きに働ける』『希望するものだけ』だなどと言うが、そんなことは実際の職場ではなかなかない。職場で言われたら、一言の反論もなく、懸命にこなすことしかできない。結果、苦しむ人が生まれる。私たちは少なからず、そうした現場に身を置いた経験があるのではないか、目の当たりにしたことがあるのではないか。これ以上働くことで犠牲者を出してはいけない、より幸せな人生を送るために私たちは働いているのではないか、と申し上げたい。大事なことは、この社会を支えている、一生懸命働いている方の命を守ること。

 国は国民の命を守る法律をつくるところではないのか。繰り返しになるが、誰もが自分なりの人生や幸せを追いかける権利がある。また、基本的人権を社会で守り合うために最低限のルールとして定めたものでなければならない、という原則に反する、国民の命を脅かすような裁量労働制の拡大をはじめとした高度プロフェッショナル制度は盛り込むべきではない。

 内閣府のワークライフバランス憲章は、誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない、と掲げている。その実現と、幸せ実感都市ながのを共に目指す長野市の働く仲間たちが真の幸せを実感できることを祈っている。


関連記事