イメージや空気で物事を計るのではなく

鈴木洋一

2016年06月07日 22:08

 長野市第一庁舎、長野市芸術館の免震ゴム交換工事竣工報告ということで庁舎地下2F下に潜り、実際の免震ゴムを視察しました。平成27年3月に発覚し8月から工事が開始され、今年の3月の交換工事が終了。以後、交換工事に伴う施設、設備の修善、清掃等や検査といったすべての工程が完了し、本日の視察となりました。全国のみならず海外にも大きな影響を及ぼした免震ゴムの問題でありますが、長野市においての迅速な対応には関係者のご努力の成果です。生みの苦しみを幾度となく経験した庁舎芸術館、これから、しっかり長野市民のための施設となるはずです。


 午後、業務多忙で悩みましたが、せっかくの機会であったので、里山資本主義、デフレの正体でお馴染みの藻谷浩介氏の講演会が長野商工会議所まちづくりセミナーとして開催され参加して参りました。以前より私自身、藻谷氏の理論には興味を抱いており結論から言えばストンと腹に落ちる勉強になる貴重な講演をお聞きすることができました。
冒頭、長野市でも、そして須坂市、千曲市でも大型ショッピングモールの建設が議論の遡上に登っているところでありますが、藻谷氏によれば、長野市で10万/㎡売り場面積が増えることにより市域全体の小売りの売り上げが10億減少し、更に、新たな店自身の売り上げも上がっていかない、つまり、売り場効率が悪くなるだけだ、とうことです。大型店が増えることにより過当競争が激しくなり、と同時に更に値下げ合戦となる、その結果、アルバイトやパートといった非正規雇用者数も減少に向かう、ということです。私も会社員時代、大手のスーパー等が取引先であり、丁度、値下げ合戦の中でまさに生き残り合戦の模様を呈しておりました。これ以上、大型ショッピングモール建設が本当に地域活性化となるのか、雇用を生み出すのか、いささか疑問が残る部分であります。長野市権堂地区において大手スーパーの動向が気になるところでありますが、イメージや空気で物事を計るのではなく、常に事実を数字で確認しながら進めていかなければならないという理論には賛同するところでありました。


 また、日本経済全体の話の中で、株価がいくら上がったとしても、GDPには大きな影響を与えていない、また、個人消費にも大きく影響を及ぼしていない、という部分も具体的な数字を用いての説明がありました。面白いことに、GDPは私が社会人としてスタートを切った、更にバブル崩壊後の平成5年は約500兆円、平成27年は約570兆円、この20年間でGDPの大きな落ち込みはなく、むしろ僅かながらでも右肩上がりの状態。そうした状況下でやらなければならないことは、少子高齢化、人口減少社会を迎え、そして突入している中で、そして個人消費を上げていくには賃金を上げていくこと、そして女性がしっかり働ける環境を構築していくこと。合計特殊出生率が最も低い都道府県は東京都、そして、女性の就業率も東京都は低く、待機児童の問題等で女性が働ける環境が整っていない現実もあります。福井県は女性の就業率も高く、そして、合計特殊出生率も高い県もあるわけです。そうしたことを踏まえると、藻谷氏の言う通り、まずは、雇用、そして、現役世代の収入増を図り、そして個人消費を喚起していくことに繋がっていくはずです。


 単なる掛け声ではなく、そうしたことを実現するための具体的な施策を打ち出していかなければならない、長野市でも「まちひとしごと総合戦略」を今年度からスタートしております。長野市においても住民票ベースでの生産年齢人口である15歳~65歳までの人口が平成10年の5,4万人に対し、平成27年5,1万人に減少しております。今日の藻谷講演を通して長野市として出来ることを探りながら生かしていきたいと思います。

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